中小企業でテレワークが進みにくい理由とは? 導入時の課題と解決策を解説!

2024.01.23

テレワークが進まずに困っているビジネスパーソン

企業と従業員の双方にとって多くのメリットがあるテレワークですが、大企業に比べ、中小企業ではあまり導入が進んでいないという実態があります。

2022年4月に総務省が発表したテレワークの実施状況に関する資料では、2021年10月時点での大企業のテレワーク実施率が66.1%であるのに対し、中小企業では31.3%にとどまり、大企業と比べて中小企業のテレワーク実施率は低いという結果が示されています。
(参考:総務省「総務省におけるテレワーク普及・推進の取り組み」

しかし、テレワークは固定費の削減や人材獲得などにもつながるため、中小企業でも導入を検討したい施策です。この記事ではテレワークの導入に際して生じる課題と、その解決方法を解説します。

中小企業でテレワーク導入が進まない理由

テレワークではできない紙の書類を扱う業務

東京都の「テレワークに関する実態調査」によると、テレワークを導入していない企業の理由として最も多かったのは「テレワークに適した仕事ではないため」という回答でした。それ以外にも「テレワークをできる制度がないため」「業務効率が低下するため」という回答も多数寄せられています。
(参考:「東京都 多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」

テレワークの導入には、従業員が自宅で業務を行うための端末の手配をはじめ、テレワーク環境の整備に多大なコストが発生します。それに見合う効果が得られるか経営者が判断できないという理由でテレワークの導入がなかなか進まないことも多いでしょう。

さらに、取引先のデジタル化・ペーパーレス化が行われていない場合、郵便物やFAXの受け取りや、紙の請求書や契約書の作成など、取引先の要望に合わせてオフィスへの出社が必要になるケースもあるでしょう。

中小企業でテレワークを導入するメリット

テレワークによるメリットを受けながら快適に仕事をしているビジネスパーソン

テレワークは、以下のような効果が期待できます。

  • 従業員の移動にかかる負担の軽減と生産性の向上
  • ワークスタイル改革で人材確保ができる
  • 事業継続計画(BCP)の対策になる
  • オフィス、交通費などの経費削減につながる

とくに、大企業に比べて人手不足がより深刻な中小企業にとって、離職防止や人材確保は大きなメリットです。一つずつ詳しく見ていきましょう。

従業員の移動にかかる負担の軽減と生産性の向上

テレワークを導入する大きなメリットの1つは、従業員が移動する際の負担軽減です。テレワークは基本的に通勤の必要がないため、交通機関の遅延などのトラブルを考慮する必要がなく、満員電車や道路渋滞による心身のストレスもありません。こうしたストレスや移動による疲労の軽減により、心身ともに健全な状況で業務に取り込むことで生産性の向上も期待できます。

ワークスタイル改革で人材確保ができる

育児や介護などの時間を確保したい従業員の場合、テレワーク導入による在宅勤務でワークライフバランスを大きく改善できる可能性があります。従業員にとって働きやすい環境を作ることは、離職率の低下につながります。

また、通勤を必要としない完全テレワークの場合であれば、自社から遠く離れた地域や海外の居住者の採用も可能となります。求人のエリアを拡大し、オンラインでの会社説明会や面接を実施することで、求人への応募者数の増加が期待でき、自社に合った人材を採用できる可能性は高まります。
このように、テレワークは人手不足解消につながる一手とも言えます。

事業継続計画(BCP)の対策になる

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)とは、災害などの緊急事態においても中核となる事業を継続する、もしくは一時的に中断した場合に早期復旧を図るための経営戦略を指します。

大雨・洪水・土砂災害・地震などの大規模な自然災害のみならず、感染症拡大時には、ほとんどの従業員が突然出社できない事態となる可能性もあります。

テレワークが可能であれば、そのような緊急時にも従業員は自宅などで業務を行えるため、事業が長期間停止してしまうリスクを最小限に抑えることができます。テレワークが可能な環境をあらかじめ整えておくことはBCP対策として有効です。

オフィス、交通費などの経費削減につながる

従業員が常時出社しないことは、オフィス維持にかかっていたさまざまな経費の削減につながります。従業員の出社回数の減少は、通勤手当はもとより、オフィスで使用する光熱費、消耗品費の削減に直結します。
また、ほとんどの従業員がテレワークになる場合、交通の利便性が高い立地にある広い面積のオフィスは不要になります。オフィスの規模の縮小や、立地を賃料が割安な地方や郊外に移転することで、固定費を削減することもできます。

中小企業でテレワークを導入する際の課題

テレワーク導入を検討するもコスト面などのデメリットに悩む男性

テレワークの導入には、コスト面や人材面などの課題も存在します。

導入コストがかかる

テレワークの実施には、従業員が自宅などで業務を行うためのノートPCやその周辺機器をそろえる必要があります。同時に、社外での作業による情報漏えいなど、さまざまなセキュリティリスクに備える対策も必要です。デバイスの購入やセキュリティサービスの導入、ネットワーク環境の構築などのコストがかかり、中小企業にとっては大きな負担になりえます。

また、テレワークでのデータやデバイスの取り扱いや、セキュリティ対策を行うためのルール策定、テレワークを規定する就業規則の整備も必要となり、導入時の負担となるでしょう。

テレワーク導入に理解が必要となる

テレワークに対しての考え方はさまざまです。
消極的または否定的な従業員がいる場合は、理解が得られるように説明し、業務に対する意欲低下を防ぐべきです。
経営陣の中でも意見が分かれる場合は、導入コストと得られる効果を可視化し、理解を得る必要があります。

テレワークの導入課題・注意点

テレワークの課題解決に必要なツール

テレワークの導入に際してよくある課題と、その解決に役立つツールについて説明していきます。

セキュリティ対策

総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」では、企業の情報資産を守るには「ルール」「人」「技術」のバランスが取れた情報セキュリティ対策とその維持が重要と述べられています。従業員が個人でセキュリティ対策を行うには限界があるため、経営方針として全社的にセキュリティ対策に取り組むことが求められます。

推奨できるサービスとして、中小企業向けのサイバー攻撃対策に不可欠な要件(※)を満たしていると認定された、NTT Comのエンドポイントセキュリティソフト「マイセキュア ビジネス」があります。
(※参照:総務省「テレワークセキュリティ ガイドライン 第5版」

マイセキュア ビジネス

マイセキュア ビジネス

セキュリティソフトである「マイセキュア ビジネス」は、エンドポイント端末(PC)上のデータファイルをリアルタイムでクラウド上に問い合わせを行い、脅威であるかを判定します。

新種のランサムウェアやマルウェアにも対応し、まだウイルスとして定義されていない未知のマルウェアに対しても監視を行います。標的型ウイルスなど新しい脅威からも端末を防御します。

従来型のウイルスソフトと比較し、フルクラウド型の超軽量ソフトでインストールやスキャンが超高速で完了します。また、管理者側にもクライアント側にもわかりやすい管理画面が特長です。

ほかのセキュリティ製品とも競合が発生しないので、セキュリティホールをつくることなく迅速な移行が可能なうえ、端末負荷が小さく快適な動作パフォーマンスを発揮します。

コミュニケーションの不足

同僚と顔を合わせないテレワークが、コミュニケーション不足の要因となり業務の質を低下させるおそれがあります。同じ空間で業務を行うと、雑談や何気ない会話から良好な人間関係が構築され、同僚の勤務姿勢から学びを得ることもあり、従業員同士のコミュニケーションは重要です。テレワークになることで、これらのメリットが失われ、孤独感や不安を感じるなど、従業員のメンタルヘルスに負の影響をもたらす事例も報告されています。

コミュニケーション不足の解消には、1日の初めに数分の挨拶を兼ねたオンライン通話を奨励するなど、会話の機会をあえて設けることが有効です。また、メールや電話より心理的なハードルが低いチャットツールの採用も有効です。

Microsoft Teams Essentials (AAD Identity)(NCE) (年契約/月払い)

Microsoft Teams Essentials (AAD Identity)(NCE) (年契約/月払い)

「Microsoft Teams Essentials」は、オンライン会議やチャットなどの機能を持つ、1~300ユーザーで利用する中小企業向けに設計されたコミュニケーションサービスです。

オンライン会議、チャット、ユーザー1人あたり10GBのクラウドストレージ(OneDrive)など、ビジネス上必須となる機能をそろえながらもリーズナブルな価格で導入できます。
オンライン会議では、最長30時間、参加者最大300人の会議を無制限に開催することが可能です。
デスクトップ用アプリとモバイル用アプリを提供しているため、社内PCだけでなく、スマートフォンにも導入可能です。

中小企業でテレワーク導入に向けてできること

テレワーク導入に向け効果検証や目標設定などを行う男性社員たち

テレワークを導入する際には、一部の従業員を対象に期間限定でテスト導入を実施するなど、少しずつ始めることをおすすめします。また、公的な補助金・助成金を活用できないかも確認しましょう。

テレワーク・リモートワークの目的・目標を決める

まず、テレワークの導入により、どのような課題を解決するのか目的を考え、どのくらいの効果を得たいのか、目標を設定しましょう。

例えば業務時間外労働の多さを課題とするならば、「時間外労働時間を10%削減する」という目標を設定するなど、効果測定がしやすくなるよう具体的な数字で表すのがおすすめです。

まずは導入しやすいツールから

テレワークに役立つコミュニケーションツールやデータ共有サービスには、低コストで導入できるものもあります。まず低コストで導入できるデジタルツールの活用から始めてみてはいかがでしょうか。

公的な制度・補助金や助成金を活用する

国や自治体で、テレワークの導入・推進を図る企業向けに補助金や助成金を支給する制度を用意されている場合があります。
一例として、テレワークに使用するための通信機器やITツールの購入や、就業規則の変更などにかかった費用の一部が支給されます。
それらを有効に活用することで、導入コストの負担を軽減できるため、適用される補助金や助成金についての情報収集を行うことをおすすめします。

まとめ

業種によってはテレワークの導入が難しいケースもありますが、一部の業務をオンライン化するなど、部分的・段階的な導入から始める方法もあります。
テレワーク導入によって、生産性の向上や人材確保が見込め、事業継続や経費削減にもつながるなど多くのメリットがある一方、導入コストなどの問題もあるため、公的な補助金を活用することも視野に入れて検討するとよいでしょう。

テレワーク関連サービスは数多くあるので、どんな課題を解決できる可能性があるのかについては下記の特集を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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