リモートワーク導入でよくある失敗例とは?成功させるコツや導入手順を解説
新時代の働き方として注目されているリモートワークには、業務効率の向上やコスト削減、離職防止などさまざまなメリットがあります。しかし、実際に進めてみて、トラブルの発生や生産性の低下など、うまくいかない企業も少なくないようです。リモートワークをうまく現場に浸透させて成功させるためには、導入前の準備と導入後の効果検証、改善が欠かせません。
この記事では、遠隔勤務を円滑に導入したい企業向けに、リモートワークの失敗事例および成功のための要点、さらに正しい導入手順について詳述します。
リモートワークでよくある失敗事例
コミュニケーション不足による作業遅れ
リモートワークでは、オフィスに出社することがないため、同僚やチームメンバーと直接対面する機会がありません。業務と直接関係のある内容から気軽な雑談まで、あらゆるコミュニケーションが取りにくい環境です。
リモートワークでも、便利なITツールを使って同僚やチームメイトとこまめに連絡を取り、意思の疎通を図ることは可能です。ただし、表情や声色のような言外の情報を把握しにくいため、情報やニュアンスのズレが生じやすいです。コミュニケーションが不足し情報把握の不備や漏れが起こりやすくなり、結果として作業が遅れてしまう失敗事例は多くみられます。
従業員のサボり・過労が発生する
リモートワークは、管理職が従業員の仕事中の様子を直接確認できないため、従業員のサボりや、過重労働が発生しやすい環境です。
自宅やカフェなどで仕事をする場合、同居家族が声をかけてくる、リラックスしすぎる、などの要素が仕事に集中する妨げになるかもしれません。デスク周りの作業環境が充実しておらず快適に作業できないことが、サボりにつながるケースもあります。
その一方で、リモートワークにより働きすぎてしまい、オーバーワークになることもあります。リモートワークは個人で仕事をすることが多く、働き方の自由度が高い分、就業時間を過ぎても仕事を続けやすい環境です。リモートワークで集中できず作業効率が落ちてしまった人が、進捗を気にして遅くまで働いてしまうケースも起こり得ます。
紙の書類が必要な業務がある
リモートワークを実現させるために、書類のデジタル化は非常に重要です。業務に必要な資料やマニュアルがデジタル化されていなければ、リモートワークで仕事を完結させることができません。ペーパーレス化が遅れている場合、紙での申請や押印、郵送物の発送および受け取り、紙でのみ保管している資料の確認などが必要になります。
こうした業務がある場合、その業務のためだけに出社が必要になり非効率です。紙の書類を扱う業務を抱えている従業員とそうでない従業員で出社の必要性が異なるため、不平等となる恐れもあります。
リモートワークを成功させるコツ
スムーズなコミュニケーションを取れる環境を作る
リモートワークを成功させるためには、スムーズなコミュニケーションが取れる環境の整備が必要不可欠です。チャットツールやオンライン会議システムを導入し、双方向のコミュニケーションが可能な場を提供しましょう。コミュニケーションツールは、自社に適した機能を備え、操作が容易なものを選ぶことが重要です。
同僚やチームメンバーと気軽に連絡を取れる環境を整えれば、何気ない雑談から仕事のアイデアが生まれることもあるかもしれません。Web会議では可能な限りビデオをオンにし、相手にチャットでの迅速な返信を要求しないなど、快適な意思疎通が図れるようなルールを設けることも効果的です。
従業員の労働管理・目標設定を行う
リモートワークでの進捗管理や仕事の進め方をすべて従業員に任せてしまうと、従業員の負担が大きくなりすぎてしまいます。「何をすればよいかわからない」と仕事を進められない従業員もいれば、反対に「やることが多くて手が回らない」という悩みを抱える人もいるでしょう。
リモートワークはオフィスで直接マネジメントができないからこそ、遠隔でも管理できる体制作りや、モチベーションを保つ工夫が欠かせません。従業員の勤務時間や進捗状況、目標の達成に向けてやるべきことなどを可視化し、共有する工夫が求められます。
リモートワークや在宅勤務の労働管理におすすめなのが、勤怠管理システムや目標管理システムです。勤怠管理システムは、打刻や労働時間の自動集計、給与計算や年休付与などができます。目標管理システムは、個々の社員やチーム・部署単位での目標設定や達成状況などの一元管理が可能です。こうしたシステムを利用すれば、人事部の負担を軽減させながら個々の労働状況を可視化し、効率的に管理できます。
セキュリティ対策を徹底する
オフィス外で業務に携わるリモートワークでは、情報漏えいを防ぐためにセキュリティ対策が必須です。ひとたび顧客情報や機密情報などが流出すれば、企業の信頼失墜や売上げの低下などにつながります。
セキュリティ対策の例として、セキュリティ対策ソフトの導入や適切なパスワード管理、アクセスの管理・制限、暗号化などが挙げられます。SMSによるワンタイムパスコードの入力や指紋認証など多要素認証を導入したり、VPNを利用したりするのもよいでしょう。リモートワークにおける情報の取り扱いに関するルールや、万が一トラブルが起きた際の対処法を策定し、従業員に周知することも重要です。
リモートワーク導入の効果検証と改善を行う
リモートワーク導入後は、期待した効果が得られているかどうか検証や改善のステップを踏むことが重要です。まずはリモートワークをトライアルとして試験的に導入し、効果を測定したうえで継続や部門拡大するかどうか検討するのも一つの手です。
厚生労働省によるガイドブック「テレワークではじめる働き方改革」の中で、リモートワークの効果検証における指標として以下の例が挙げられています。
【量的評価】
- 顧客対応(回数・時間、契約獲得数・維持数など)
- 情報処理力(データ処理数、企画書の作成件数など)
- オフィスコスト(賃貸料、電気代など)
- 移動コスト(移動時間、通勤や出勤の移動コストなど)
- ICTコスト(情報機器コスト、クラウドサービス利用費など)
- 人材確保・維持(新規採用の応募者数、離職者数など)
【質的評価】
- 業務改革(知識・情報の共有、無駄な仕事の削減など)
- 成果・業績(顧客満足度の向上など)
- コミュニケーション(上司とのコミュニケーション、会議の質など)
- ワークの質(仕事のやりやすさ、自律性など)
- 生活の質(家庭生活、健康の維持など)
- 全体評価(仕事への満足度、ワークライフバランスの実現など)
1つの観点だけでなく上記のように総合的な項目で検証した上で、課題の洗い出しや改善を進める必要があります。リモートワーク導入時の目標を達成できているのか、従業員が働きやすい環境にあるのかなどを検証しましょう。検証結果をもとに、社内レギュレーションの見直しや作業環境の改善などを繰り返せば、リモートワークの質を向上させられます。
(参照元:https://telework.mhlw.go.jp/info/pdf/H28hatarakikatakaikaku.pdf)p.89~p.90
リモートワークの正しい導入手順
1. リモートワーク導入のイメージ・プロセスを把握する
リモートワークをただ導入するのではなく、どのような形を理想としているのかイメージし、プロセスも把握します。全体像が漠然とした状態でいきなり導入を進めようとするのは非効率的です。
リモートワークを始めるには、ネットワーク環境の構築や就業規則の改定、必要なツールの選定など多くの準備が必要です。「新たな職場環境の構築」と考えると、リモートワークの導入準備にリソースを割く必要性の高さがわかるでしょう。少人数や低コストで対応しようとせず、プロジェクトチームなどを構築して万全の体制を整えることが大切です。
なお、リモートワーク推進プロジェクトチームのメンバーに偏りがあると、社内全体に馴染まない制度になってしまう恐れもあります。管理部門から現場担当者まで、全部門を巻き込むのが理想です。
2. 基本方針を決める
続いてリモートワークの導入における基本方針(ポリシー)を決めます。基本方針を決めなければ運用方針が定まらず、導入後の効果検証もできません。
誰が・何のために・どのくらいの頻度で・どのような内容を・どのくらいの経費でリモートワークするかを考え、基本方針を策定するのがポイントです。「何のために」という目的を決めておくことで、設定したルールや導入したツールが自社に合わないという状況を回避できます。
リモートワークを導入する範囲(部署、人数、業務内容など)や頻度、導入にかけるコスト(予算)についてもこの段階で決めておき、社内の認識を統一しておきましょう。
3. 現状の把握と導入後の課題を洗い出す
リモートワーク導入前の社内の状況を把握し、導入後に想定される課題を洗い出しましょう。このプロセスを怠ると、現状に合わないルールのリモートワークを導入してしまい、業務の混乱や従業員の負担増加をまねきかねません。また、リモートワーク導入後に必要な修正や改善が多くなり、必要以上にコストがかかってしまう可能性もあります。
社内の現状把握を行う際は、主に以下の項目をチェックします。
- 人事評価制度
- ICTツール環境
- 就業規則
- セキュリティ対策
- 勤怠管理の方法
- 社内研修
4. リモートワークのルールを作る
リモートワークの運用に関して明確なルールやガイドラインを定めておけば、現場の混乱回避や不安解消に役立ちます。リモートワークという働き方が形だけの制度となり、利用する人がいないという事態も避けられるでしょう。
社内ルール策定にあたり、盛り込みたい内容は以下の通りです。
- 導入形態
- 対象者・対象部署
- 対象業務
- 人事評価関連
- 情報の取り扱いやデータ・資料の持ち出し関連
リモートワークを認める条件や期間、就業時間・就業場所などに関して、就業規則の中で規定を設ける必要もあります。単にルールを策定するだけでなく、ルールを周知するための教育や研修も必要です。
5. ICT環境を整える
オフィス以外でもオフィスにいるのと同じように仕事ができるよう、ICT(情報通信技術)環境を整える必要もあります。快適な環境構築に役立つのは、以下のようなツールです。
- Web会議システム
- チャットツール
- 勤怠管理ツール
- セキュリティ対策ツール
- 情報共有ツール
- 音声・電話関連ツール
- 回線・SIMなどのネットワーク関連ツール
ドコモビジネスオンラインショップでは、快適なリモートワーク環境の構築に役立つ製品やサービスを幅広く提供しています。リモートワークの成功や効率化につながるおすすめのサービスを4つ紹介します。
0035ビジネスモード
0035ビジネスモードは、携帯の電話番号を変えることなく従業員個人のプライベート通話とビジネス通話の料金を分計できるサービスです。0035ビジネスモードを利用すれば、仕事用の携帯電話の貸与や、ビジネス通話分の経費精算などが必要ありません。コストと事務処理にかかる負担の両方を抑えられます。
ビジネスモバイル
ビジネスモバイルは、端末やキャリアを問わず、専用のスマホアプリから簡単なダイヤル操作を行うだけで国内通話を定額かけ放題で利用できるサービスです。定額制なので、ビジネス通話が多い部署や業務内容の人に適しています。
MagicConnect
MagicConnectは、自宅のPCやタブレットなど、手元の端末からオフィスPCにアクセスできるサービスです。USBキータイプとアプリタイプの2種類あり、どちらも接続が簡単で高セキュリティです。PCにUSBキーを挿して利用するUSBキータイプと端末にアプリをインストールして利用するアプリタイプがあります。
社外秘データの情報漏えいを防止でき、自宅で安全に業務を行えます。累計導入実績は20,000社以上にも上り、多くの企業から選ばれている人気のサービスです。
Bizストレージ ファイルシェア
Bizストレージ ファイルシェアは、誤送信や情報漏洩を防止できる「ファイル送受信」機能と、特定のメンバーとファイルを共有できる「共有フォルダー」機能を搭載したサービスです。メンバーのアクセス権限は8種類から選べるため、業務内容や役職に合わせてアクセスできるフォルダーの設定が可能です。リモートワークでよくある「資料を共有しにくい」「複数人での情報共有が難しい」などの課題を解消できます。国産の独自のサービスで、最短5営業日で利用を開始できます。ビジネス用途では無料のストレージサービスを使うのをやめて、ワンランク上の安心なファイルのやり取りを実現させましょう。
6. 試験導入と効果検証・改善を行う
リモートワークを本格的に導入する前に、まずは試験期間を設けましょう。入念な準備や検討をしても、実際に導入しなければみつからない課題が存在するケースがほとんどです。試験期間の適切な長さはケースにもよりますが、少なくとも3カ月は必要です。
試験導入後は効果検証や対象の従業員に対するヒアリングなどを行い、課題を洗い出しましょう。本格的な導入後も、定期的な効果検証と改善は必須です。PDCAサイクルを定期的に回しながらよりよい方法やより快適な環境がないか絶えず模索し、理想的なリモートワーク制度を整えましょう。
まとめ
リモートワークではコミュニケーション不足による非効率な作業や、管理の目がないことによる従業員のサボり・オーバーワーク、紙書類が必要な業務によって出社が必要になるなどの失敗があります。こうした失敗を避けるには、リモートワークにおけるコツを押さえるとともに、正しい導入手順を踏むことが大切です。
ドコモビジネスオンラインショップではリモートワークに役立つさまざまな製品やサービスを提供しています。ツールをうまく活用し、自社に適したリモートワーク環境を整えましょう。