2023.08.28
大規模な自然災害や感染症の流行は、企業にも大きな損害を与えます。突如発生する非常事態に備えて、事業を継続・早期復旧するための計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定しておくことはすべての企業にとって重要です。
本記事では、BCPの意味や重要性、緊急時のマニュアル作成方法について解説します。
目次
BCPとは
BCPとは「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の頭文字を取った言葉です。大雨・洪水・土砂災害・地震・感染症流行などの非常事態が発生した場合でも、企業の重要な事業を継続または早期復旧させるために、行動方針や具体的な復旧手段をあらかじめ計画しておくことをいいます。緊急事態により事業の縮小や人員の削減を余儀なくされる状況を回避することがBCPの重要な目的です。
緊急事態から事業と従業員を守るために
BCPにもなる災害対策サービス特集はこちらBCPはなぜ必要か
日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しています。加えて、昨今はサイバー攻撃や世界的な感染症の流行など、企業を取り巻くリスクが多様化しており、こうしたリスクへの対策の必要性が高まっています。
会社と従業員を守るため
災害などの発生時、最優先に守るべきは従業員の生命と安全です。BCPの観点における「会社・従業員を守る」とは、単に従業員の命や会社の設備を危険から守るということだけではありません。
2011年に発生した東日本大震災では、建物や設備への直接的な被害が少なかった企業でも、復旧が遅れたために事業の継続がままならず、事業縮小や従業員の解雇を行わざるを得ない状況となったケースがありました。BCPにおいては、非常事態でも事業を継続できるような対策を行うことで、従業員の生命だけではなく企業経営や雇用を維持することを最終的な目標としています。
(参考:第2節 東日本大震災が雇用・労働面に及ぼした影響 - 厚生労働省(PDF形式/ 1.86 MB ))
緊急時対応のスピードをあげるため
大規模な災害が発生した場合、多くの企業が混乱状態に陥ります。そのような状況にあっても、平常時から緊急時に備えた対策を準備しておくことで、早期に商品やサービスの提供を復旧でき、事業が停止するリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
不正アクセスなどに備えるため
IT化が進んだ現代の企業活動は、ネットワーク利用を前提にしたシステムで運用することが多く、ネットワークに障害が発生すると多くの場合で事業継続に支障をきたします。
会社のサーバーやPCが不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合、自社の操業が停止するだけでなく、機密情報の流出などのリスクもあります。
このように、IT化に伴うリスクが企業活動の妨げにならないよう、未然に防ぐこともBCPの大きな目的の1つです。
BCPと企業防災との違いについて
企業防災とは、大雨・土砂災害・地震・火災・洪水などの自然災害を想定した対策ですが、BCPは自然災害だけでなく、情報セキュリティ事故などを含むすべての非常事態に対応するための対策です。
また、企業防災とBCPでは、対策の対象や範囲が異なります。企業防災は自社の経営資産のみを守る取り組みであるのに対し、BCPは従業員や、取引先などの関係者も対象に含んだ上で「事業の継続」を目指す取り組みです。
企業防災については、こちらの記事詳しく解説しています。
企業防災とは?取り組みの重要性と具体的な対策事例BCPマニュアルの種類
自然災害に加え、社内外の要因により想定される様々なリスクに備えるには下記の3種類のマニュアルを整理しておくと安心でしょう。
- 自然災害マニュアル
- 外的要因マニュアル
- 内的要因マニュアル
自然災害マニュアル
自然災害マニュアルとは、地震や津波、大雨、洪水、台風、大雪、竜巻、噴火、高潮などの自然災害を想定したものです。
災害発生時の緊急連絡体制や、従業員の安否確認方法、救命装置の使用方法、避難方法や経路、災害ハザードマップ、被害状況の確認を行う方法や担当者、操業が停止した時の具体的な対応などを定めます。
外的要因マニュアル
外的要因マニュアルとは、通信障害や外部からのサイバー攻撃、感染拡大、予期しない取引先の経営悪化、停電など、自然災害以外の外部要因により引き起こされるトラブルの対処法を定めるものです。停電時の電力確保やデータ復旧の方法、急な取引停止が起こった際の代替企業の選定などが、ここで定められる対策に挙げられます。
内的要因マニュアル
内的要因マニュアルでは、自社の設備や機械の不具合、従業員の人的ミスなど不測の事態のほか、オフィスの移転やシステムの刷新による機能の一時中断などに対する対応について定めます。自社内で起こりうるリスクを幅広く想定し、社外への謝罪文面や取引先の連絡リスト、記者会見開催の手順などをマニュアルに定めます。
BCPマニュアルの作成手順とポイント
BCPマニュアルを作成するにあたっての手順とポイントは、以下のとおりです。
自然災害のみでなく、社内外の要因により想定されるさまざまなリスクについても多方面から想定し、漏れのないように自社の事業に必要な情報や対応方法をマニュアルに集約し、非常事態に備えましょう。
1. 目的の設定
自社が目指すBCPの方向性を定めます。BCPに取り組むことや目指す方向性について社内で情報共有しておくと、従業員の理解を得られやすいでしょう。
2. プロジェクトチームの立ち上げ
BCP策定に関わるプロジェクトチームを立ち上げます。その際、社内の各部署から少なくとも1人はチームに加えるようにすると、BCP策定が全社的な活動として認知され、浸透しやすくなります。
3. リスクの洗い出し
自社で想定されるリスクを洗い出します。企業を取り巻くリスクには、自然災害だけではなく社内外の要因によるさまざまなリスクについても、漏れのないように多方面から想定します。
4. 優先順位の決定
続いて、災害時に優先して復旧したい中核となる事業を絞り込みます。収益の高さや社会的重要性などを考慮しながら判断すると、会社の存続に必要不可欠な事業の優先順位を決めやすいでしょう。
5. マニュアル作成
中核となる事業を定めたら、自然災害、外的要因、内的要因ごとに起こりうるケースを挙げ、どのくらいの損害が発生するかを算出します。
また、事業を再開できるまでに取るべき行動について、詳細を具体的に定めていきます。緊急事態発生直後の初期対応段階、業務再開段階、本格復旧段階の3つのフェーズで分け、具体的な行動内容と担当部署、責任者などを設定していきます。
6. 全従業員への共有
BCPマニュアルを社内に周知し、従業員への共有を図ります。データでの共有の他、ネットワークの不具合の際にも対応できるように、紙のマニュアルも用意しておくことをおすすめします。
BCPマニュアル作成に活用できる資料
BCPマニュアルを一から作成するのが難しい場合は、中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針」(※参考1)の活用がおすすめです。入門コース・基本コース・中級コース・上級コースの4コースから選択し、テンプレートに従って帳票などを取りまとめることにより、簡単にBCPを完成させることができます。
(参考1:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」)
BCPマニュアル運用のポイント
BCPマニュアルは常にアップデートしていくことが重要です。
策定後も、BCPに関する従業員向けの研修や勉強会を継続し、訓練を定期的に実施しましょう。従業員の意識を高め、マニュアルで算出した復旧時間や対策方法に無理がないかの検証もできます。
研修や訓練を通じて明らかになった問題点があれば、その都度改善していきます。安否確認アプリなどBCPに伴って導入したツールの使い勝手や運用ルールの確認も、研修や訓練を通して確実に行いましょう。
緊急時に重要な安否確認については、下記のページで詳しく解説しています。
BCPにおける企業の安否確認の方法と具体的な手順、おすすめの安否確認システム中小企業必見!BCPにおすすめのサービス
ドコモビジネスオンラインショップには、緊急時や災害時に役立つサービスがあります。その中から、導入しやすく中小企業におすすめのサービスをご紹介します。
Biz安否確認/一斉通報 通常プラン
「Biz安否確認/一斉通報」は、お客さまの災害対応をサポートするBCPツールです。
NTTコミュニケーションズの堅牢なデータセンターで管理運営している信頼性の高い安否確認システムです。
地震やその他自然災害などが発生した有事の際に、社員や従業員に安否確認や注意喚起を一斉に配信し、回答内容を自動集計します。
安否回答の登録が行われるまで、メールやスマートフォンアプリのプッシュ通知など複数の連絡手段を使って社員に繰り返し登録を依頼し、確実な登録をサポートします。
また、PC、携帯電話、スマートフォンから管理者画面にアクセスし、安否回答の登録依頼や集計状況確認を行えるため、緊急時や移動中であっても利用しやすいこともポイントです。
未回答者への自動再送など管理者の負担を軽減する機能を備えているほか、地震以外でも任意の文面で一斉通知やアンケートが可能です。
MagicConnect(アプリタイプ/アプリ(Windows)タイプ)
MagicConnectは、手元の端末に会社PCのデスクトップ画面を呼び出して操作するリモートアクセスサービスです。会社PCにプログラムをインストールするだけで、自宅・外出先のインターネットにつながったPCがオフィスPCに早変わり。社内データを持ち出すことなく、会社にいるのと同じように業務を安全に行えます。
MagicConnectがあれば台風などで交通が遮断されても、自宅からテレワークで業務を行うことが可能になります。1IDからご利用可能なので、端末を新たに用意しなくても、社員私用の端末から会社PCを操作できるため、会社で業務用のノートPCを貸与できないという企業にもおすすめです。
まとめ
BCPは、自然災害やその他の非常事態における企業の損害を最小限に抑え、事業の継続を図るためのものです。大規模な自然災害は毎年のように発生しており、サイバー攻撃などのセキュリティリスクも年々増加しています。
そのようなリスクに幅広く備えるために、マニュアルの策定とアップデートに加え、対策ツールの導入も検討してみてはいかがでしょうか。
緊急時に事業を支えるBCPツールはこちら!
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